小川精麦の黒澤です。
今回の研修報告は、コーンベルトと呼ばれる穀倉地帯でとうもろこしを作る農家・それを集荷保管する施設及び輸送管理をする施設を予定を変更してあと2回にわけて紹介いたします。
まずは簡単に農場と輸送管理施設の位置関係を図にてご紹介させて頂きます。
■⇒コーンベルト地帯
農家訪問
ルイビルとセン トルイスで農場訪問をしました。どちらも広大な耕作敷地と充実した機械(作付機や収穫機)及び貯蔵サイロを備えていました。
今年は一部の地域では非常に雨が多く、とうもろこしをあきらめて大豆の作付けに変更する農家もいました。
雨が多いと土壌の窒素分の流出による窒素不足での生育不良や、作付け時期の延長や作付け期間が延びることにより授粉期の適正時期を逃す結果受粉率の低下や、授粉期遅滞による早霜等の被害により単収の減少が生じるそうです。
しかし、作柄・品質も良好で、高温乾燥の年にみられるアフラトキシン(カビ毒)の心配もないそうです。
耕作されるとうもろこしの大半は、遺伝子組換えとうもろこしで
GMO(Genetically・Modified・ Organisms)と呼ばれます。
遺伝子組換えの研究開発の目的は、病害虫などから農作物を守る事です。狙いは、除草剤耐性や病害虫に対する抵抗性を持たせることにより農薬の散布回数の削減が可能になる事、生産コストの低減が出来る事、農作業の負担を軽減させることです。利点も多いですが、安全性等についての議論は様々で、Non(非)-GMOの人気は高まりつつあります。
ルイビル マイケル・ブック農家
GMOとうもろこし330エーカーと大豆240エーカーを耕作しています。土壌は水はけの良いことが特徴です。
平年は165ブッシェル/エーカーほどの単収ですが、今年は作柄も良く180~190ブッシェル/エーカーほどの高単収を見通しているそうです。
作付けは4月25日から始め、9月12日から収穫を予定しているとのお話で、収穫を終えるのには20日間ほどかかるという事でした。
※ 1ブッシェル(bu)=35リットル(ℓ)
※ トウモロコシでおよそ25.4㎏ 大豆でおよそ27.2㎏
セントルイス ブランドン・スターキー農家
Non-GMOとうもろこし500エーカー・GMOとうもろこし250エーカー・大豆250エーカー
を耕作しています。
Non- GMOとうもろこしの割合が多い理由は
① プレミアムが付く事
② 雑草管理がしやすい土地の為除草剤散布の必要性が少なく、除草剤耐性のGMOとうもろこしを植える必要性がない事
③ Non-GMOとうもろこしの種子が安い事
以上が主な理由です。
こちらの農家も作柄は良く単収は180~200ブッシェル/エーカーの見通しだそうです。
まわりを見渡すと、別名ブルーグラス(牧草)州の名の通り広がる緑の大地と抜けるような青空で気分も爽快になりました。
CGBジェファーソンビル・CGBネイプルズ
CGBは、穀物の集荷・保管機能を果たす穀物輸送業界向けのグローバル企業で、生産・購入・保存・販売・および、作物の出荷から資金調達、リスク管理の為のサービスを提供しています。
各農家が生産した穀物の大部分は、カントリー・エレベーター(大穀物倉庫)またはリバー・エレベーターに搬入されます。イリノイ州を中心に55ヶ所のカントリー・エレベーターと、イリノイ州とオハイオ州を中心に36ヶ所リバー・エレベーターを運営しており、CGBは、集荷した穀物をこれらのエレベーターで保管・調整し、輸出向け(主に全農グレイン向け)あるいは米国内向けに出荷しています。日本などの需要量は年間を通じて一定している一方、供給(農家売り)は収穫期に集中するため、CGBで大きな保管能力を持つことで供給・需要間の調整機能を果たしています。
セントルイスにあるCGBネイプルズはCGBの中でも最大級の保管能力を持ちサイロ保管能力約160,000㌧、サイロ外保管能力約50,000㌧に及よびます。また、集荷したとうもろこしを貨車で国内向けに・はしけで輸出向けに運搬出来ることが強みです。
ルイビルにあるCGBジェファーソンビルの保管能力は、サイロビンで66,000㌧・野積み施設で29,000㌧ほどですが、水分値の高い穀物を乾燥させる為のドライヤー付のサイロも保有しています。集荷された穀物は、トラックで国内エタノール工場や飼料工場またバーボン向けに出荷されます。
受け入れの流れを見学
サンプル採取⇒検査⇒重量計量⇒搬入⇒空車計量
①. サンプル採取・検査 水分・タンパク質などを分析し、規格分けする。等級は容積重量、熱損傷、破損粒と混入異物量により格付される。
NON-GMO穀物はGMO混入率を検査する。
②. 計量 計量器でトラックごと重量を計量すると機械から受け入れ口を指示する紙が出る。
③. 受け入れ ②で指示された受け入れ口で荷卸し。
④.計量 空になったトラックを計量②の総重量との差で搬入数量がわかる。
Non-GMOのGMO混入率検査のやり方
Ⅰ. 採取したサンプルを粉砕、水分を加える。(1)
Ⅱ.(1)の液体に5分間ストリップ(検査紙)をつけ、その後5分放置する。
検査紙の一本一本はそれぞれのGMOの各種類に対応しており、
GMOのタンパク質に反応してラインが出てくる。
Ⅲ.検査紙を機械に設置し、GMO混入率を読み込ませる。
サンプルは7ヶ月間保管します。7ヶ月というのは輸出先の国で使用
するまでの期間を想定しています。
集荷されたとうもろこしはトラックや貨物船によって国内、海外輸出用に運ばれます。
ロックアンドダム
ミシシッピ川本流はアメリカ合衆国中央部の州[ミネソタ、ウィスコンシン、アイオワ、イリノイ、ミズーリ、ケンタッキー、テネシー、アーカンソー、ミシシッピ、ルイジアナ]の10の州を通って流れています。ロックアンドダムはミシシッピ川の水位調整のための施設で、川の上流に29ヶ所設置されています。
川は水深が浅く流れの早いところが多いため、ダムの水位調整によってはしけの安全な運行が守られています。河川物流は国家的にも重要である為、ロックアンドダムはアメリカ陸軍の管理下にあります。
仕組み
1つのロックアンドダムには上流側と下流側に1つずつゲートがあります。
① 下流側のゲートが閉めた状態で、ゲート内の水位を上流側と同水位まで上昇。
② はしけをゲート内に進める。
③ 上流側のゲートも閉めて、下から少しずつゲート内の水を抜き、下流側と同水位まで下げる。
④ 下流側のゲートを開けてはしけを通過させる。
実際にはしけを通過する様子を見ることができなかったのが残念です。
次回も研修編の続きです。