小川精麦の前川です。
今回は、経済動物としての視点から牛について考えたいと思います。
始めに牛肉の生産効率を日本で主に食用として利用されている「豚、鶏」と比較してみたいと思います。
食肉は家畜ごとにその成長が異なります。
牛は豚や鶏と比較すると成長するのに時間がかかり、鶏が2ヶ月ほど、豚が6~7ヶ月ほどに対して、牛は30ヶ月と豚の約5倍、鶏と比べるとなんと約15倍かかっています。
豚や鶏は、人間と同じ食糧を与えますが、牛は人間が通常食用として利用していない牧草や稲わらなども与えます。
出荷までの期間が長いため、多くのコストがかかり、価格変動によるリスクも大きくなります。
それでは牛に焦点をおいてご説明させて頂きます。
牛の特性
牛肉は部位ごとに特性がそれぞれちがっており、部位によって肉のきめや硬さなどが違っています。
牛には15部位と内臓部位12があります。その中でももっともやわらかい部分がヒレと呼ばれ、最上級の部類に属しています。
経済動物としての牛
古くは農耕用に飼われていた牛は食用ではありませんでした。時代背景の変化や、耕作用機械の発達に伴って牛を飼育する目的が変わり、特に和牛は肉用に飼育されるようになりました。肉食文化が広まり牛肉の消費は現在では昭和の時代から比べると、他国産牛肉も含め統計的には7倍ほど需要が増加しています。
最初にお伝えした生産効率から考えると牛肉は食糧という意味では非効率的な食糧のように思われます。しかし、実はそれは違います。
現在は牛肉の生産というと生産性・コストを第一に考え、比較的安い外国産の穀物を給与し成長させています。ここで、牛は草食動物である事を思い出して下さい。
人間には消化出来ない草や稲わらを炭水化物として消化することができます。これを第1胃微生物の餌とし、これらの微生物が餌として摂取した窒素源からタンパク質合成をおこないます。つまり、草食動物は人間や鳥・豚と違い消化しにくいセルロースなどの繊維分を消化し微生物の餌とし、この微生物にタンパク質を作らせ、肉を生産するという特殊な成長機構があります。
最近の異常気象や地球規模の人口増加により食糧不足が懸念されていますが
この様な状況下で人間が食糧として利用出来ない草を利用して成長できる草食動物は貴重な食糧源となりえるのです。
牛は、古代の壁画などにも多く描かれており、古くから人間と共存していました。日本には恵まれた気候と肥よくな土壌がありどこでもすぐに草(雑草も含む)が生えます。つまり日本中に草食動物の餌があるということです。日本の風土に合った農業を見直し輸入飼料に依存しない国産の「飼料」があれば、草を利用して生育できる草食動物とくに牛は食糧不足の救世主になるかもしれません。
養牛に携わりながら経済と農業と自然の上手な関わり方を探求して行きたいと思います。